トウキ

 

学名:Angerica actiloba (Siebold et Zucc.) Kitag.

科名:セリ科  用部:根茎

生薬名:当帰

用途:鎮痛、鎮静、強壮

代表的な漢方薬:当帰芍薬散 、四物湯

説明文:
山地の岩の間などに生え、特有の香りがある多年草。薬用植物として栽培される。山地の岩の間などに生え、特有の香りがある多年草。茎は多くの枝を広げ、高さは20~80センチになる。葉は2~3回3出羽状複葉で、小葉にはとがった鋸歯があり、表面は濃緑色で光沢がある。複散形花序に白色の小さな花を多数開く。5個の花弁は内側に曲がる。
分布 本州(中部地方以北)

薬草の詩:
「うちの畑で朝鮮人参を作ったんですけどたくさんできたから買ってもらえませんか」と電話がありました。鹿児島では畑に朝鮮人参はできないはずだけどなあと、よく聞いてみるとトウキのことです。ひところトウキの苗が朝鮮人参と称して売られており、いまだに混同している方がおられるようです。
この植物はセリ科で全株に独特の香りがあり、婦人病の要薬といわれていますが、この香りが「とてもいい」と言う人や「イヤダ 」と言われる方があります。一般に若い女性(特に子供)ほど好きではないようで、この植物をいまだ必要としないのだと思われます。このように香りで、この薬がその人に合うか否かを処方決定の一手段に使う事もあり、漢方の勉強が奥深いものだとうかがえます。
従来、奈良県吉野地方の「大深トウキ」が品質がよいとされていましたが、最近はこれを品種改良し病害虫に強く栽培のしやすい「北海トウキ」が主になっており、秋に根を取り乾燥したものを使用しておりますが、トウキはよく虫が付きやすく、薬局泣かせの生薬です。
婦人科・産科の要薬として瘀血(ふる血)、貧血症、腹痛、月経障害、その他婦人の更年期障害などに用いられています。
漢方医学の聖典といわれる本に『傷寒論』(急性熱性伝染病の流れと 治療法)と『金匿要略 』(病名分類での治療法)があり、これは後漢の時代に張仲景が書いたと言われます。『金匿要略』にこのトウキを主成分としている当帰芍薬散という漢方薬が、「妊娠病編」に妊娠中に腹の中がひきつれ痛むのは当帰芍薬散がいいですよ、「婦人雑病編」に婦人の)夜中のいろいろの病や痛みは当帰芍薬散がいいですよ、と出てまいります。 (正)

前の記事

シャクヤク

次の記事

ナツメ