マグロやマイタケに関する注意がなかった

アトルバスタチンが処方された患者

「薬局でグレープフルーツジュースに関する注意はあったが、マグロやマイタケに関する注意がなかった。日経メディカルのホームページには、マグロやマイタケなどに注意となっていた。命に係わることなのに説明しなくてよいのか。」

そんな、クレームが寄せられた。

ニコチン酸やナイアシンは色々な食べ物に含まれるが、食事から多少と摂ったとしても、実質的にはほとんど影響は考えられない。

そう説明していると、

「日経メディカルのホームページに〇〇というところが書いて載せてある情報が嘘ということか。嘘の情報を載せるなと薬剤師会から日経メディカルのホームページの記事について申し入れないのか。」

etc. (実際にはもっと激しいい口調、執拗)

それぞれの情報サイトは、情報掲載指針に則って情報を掲載している。

よほどひどい場合は兎も角、それに対して第三者が口を出すわけにはいかない。

分かり難ければ、分かり難いと本人から申し入れればよい。

そのようなやり取りを繰り返していると、

「そこでは何もできないということか」

とプチンと電話を切られた。

このケース、情報センターに電話をかけてくる数日前、薬局でも一悶着あったらしい。

当該薬局の先生が困られていた。

併用注意などを説明する場合、相互作用の強さがどの程度あり、日常で摂取する量で実際に問題となるようなことが起こるかなどを考えての情報提供となる。

今回の場合、グレープフルーツによる影響は臨床で問題となり得るため、薬局ではそのことについて説明している。

一方、ニコチン酸(ナイアシン)に関しては、それこそg単位摂取した場合に相互作用が懸念されることになるが、食事からそのレベルの量を摂ることはまず考えにくい。

従って、説明の際には触れないこともあるだろう。(ニコチン酸誘導体は単独でも横紋筋融解症の副作用が起こることがある)

つまり、ニコチン酸に関する説明をしていないとしても、相談者が言うような責任は発生しないとも言える。

その量的な問題と臨床上での不都合との関係を、なかなか理解できず、ネット上の字面として書いてあるものを信じ切っているところに問題がある。

相談者が言うように、それこそ、「一般の者には分からない」ということになる。

また、そういう意味では、日経メディカルのホームページに掲載された情報の説明不足ともいえる。(当該情報がどこに載っているか、少し調べてみたが見つけ出せなかった)

根気よく、具体例を示しながら説明すると分かってもらえるのかもしれないが、攻撃的な質問を受けながら冷静にデータ(例えば食品成分表表など)を調べることはなかなかたやすいことではない。

あの調子だと、「調べる時間が欲しい」と対応しても、矛先はなかなか収まらなかったのでないかと思う。(実際、電話での相談でも調べる時間をくれるような状況ではなかった)

結局、気持ち悪いからとほかの薬に変えてもらったとのことであるが・・・

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1)リピトールの添付文書

http://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/800126_2189015F1023_1_36#CONTRAINDICATIONS

併用注意
(併用に注意すること)

薬剤名等 フィブラート系薬剤
ベザフィブラート等
ニコチン酸製剤
ニセリトロール等

臨床症状・措置方法
筋肉痛、脱力感、CK(CPK)上昇、血中及び尿中ミオグロビン上昇を特徴とし、急激な腎機能悪化を伴う横紋筋融解症があらわれやすいとの報告がある。

機序・危険因子
機序:フィブラート系薬剤又はニコチン酸製剤とHMG-CoA還元酵素阻害剤との副作用誘発性の相加作用が示唆されている。

危険因子:腎機能障害

2)食品成分表 (日本食品標準成分表2015年版(七訂)文部科学省)Excelファイルのダウンロードが可能

http://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/1365295.htm

     例えばマグロ・・・・ホンマグロ赤味で1gのナイアシンを摂取しようと思うと、9kg食べないとならないことになる。非現実的であり、通常の食事量からは考えられない。

       マイタケ生 5.0㎎/100g、マイタケ乾燥64.1㎎/100g・・・生マイタケだとナイアシンを1gとろうと思うと20㎏・・・

<魚類>(まぐろ類) きはだ 生           17.5㎎/100g
<魚類>(まぐろ類) くろまぐろ 赤身 生       14.2mg/100g
<魚類>(まぐろ類) くろまぐろ 脂身 生        9.8mg/100g
<魚類>(まぐろ類) びんなが 生                  20.7mg/100g
<魚類>(まぐろ類) みなみまぐろ 赤身 生     11.0mg/100g
<魚類>(まぐろ類) みなみまぐろ 脂身 生       10.8mg/100g
<魚類>(まぐろ類) めじまぐろ 生                19.4mg/100g
<魚類>(まぐろ類) めばち 生                        13.5mg/100g
<魚類>(まぐろ類) 缶詰 水煮 フレーク ライト   9.5mg/100g
<魚類>(まぐろ類) 缶詰 水煮 フレーク ホワイト 11.0mg/100g
<魚類>(まぐろ類) 缶詰 味付け フレーク              8.0mg/100g
<魚類>(まぐろ類) 缶詰 油漬 フレーク ライト  8.8mg/100g
<魚類>(まぐろ類) 缶詰 油漬 フレーク ホワイト 12.0mg/100g

3)A clinician’s guide to statin drug-drug interactions

https://www.lipidjournal.com/article/S1933-2874(14)00072-5/pdf

 

マグロやマイタケに関する注意がなかった”へ1件のコメント

  1. 惠谷 誠司 惠谷 誠司 より:

    今朝、気になって調べたみたと、W先生から、患者さんがみたと思われる情報について次のように教えていただきました。

    ****

    一般の方だと、日経メディカル処方薬辞典をみた可能性が高いと思われます。

    https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/drugdic/prd/21/2189015F2020.html

    上記のサイトの「飲食物との相互作用」の項目に記載してあります。

    ***

    そこまでは、気づきませんでした。

    ありがとうございました。

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